事例紹介:CFRP製高圧容器のメゾスケール解析(東京大学生産技術研究所 吉川研究室 様)

概要

東京大学 吉川暢宏研究室より委託いただき,CFRP製高圧容器の設計に関する作業を行いました.(2025年7~9月)
その過程で,図1に示すようなCFRP製高圧容器ドーム部のメゾスケール解析(以下,メゾスケール解析,詳細は後述)をFrontISTRにより実施しましたので,抜粋して紹介いたします.

図1. メゾスケール解析

メゾスケール解析モデル

全体の構成

メゾスケール解析のモデルは,㈱ASTOMのツールであるFrontCOMPを用いて作成しました.

作成されたモデルは,.inp形式(Abaqus)によって出力されます.このモデルでは,図2のように樹脂部領域にCFRPテープ(シェル要素)が3次元的に重なっており,CFRP領域の節点を埋め込み拘束として扱うことで,全体の挙動を解析します.
しかし,FrontISTRの非線形静解析ではシェル要素を扱うことができないため,図3のようにシェル要素の厚み分だけオフセットしソリッド要素に変換します.

図2. メゾスケール解析モデルの構成
図3. CFRP領域をシェル要素からソリッド要素に変換

集合の作成・修正などでPrePoMAXも活用しました.(図4)さらに,PrePoSTRによってFrontISTR形式で出力し,異方性物性の与え方などを手作業で修正します.

図4. PrePoMAX上でのモデル編集

異方性物性定義のための新機能実装

異方性物性の材料方向割り当てを簡単にするために,新たな機能をFrontISTRに実装しました.
今までは異方性物性の材料方向定義は1.座標値による定義,2.節点IDによる定義 の2つでしたが,どちらで定義してもCFRP領域のすべての要素に対する膨大な材料方向の定義が必要になります.(図5)

図5. 従来の材料方向定義の方法

そこで,メゾスケール解析モデルのCFRP領域のように,要素の構成節点が規則的に並んでいる場合には,要素節点の構成順(要素のローカルな節点ID)を利用して定義ができるようにしました.(図6)
これにより,CFRPに割り当てる材料方向の定義が1行で済むようになります.この機能は近いうちにmasterブランチにマージする予定です.
また,今まで可視化結果上で確認できなかった局所座標系方向をORIENTATIONとして可視化変数に含める機能も実装しました.(繊維方向ひずみなどの算出に役立ちます)

図6. 要素節点のローカルIDを使用した材料方向の定義

解析結果(ビューワー付き)

FrontISTRによる解析結果を示します.コンタは繊維方向ひずみで,要素ひずみと要素の繊維方向を使って算出しました.(左クリックで回転,Shiht+左クリックで移動)

計算環境,計算時間を下記に示します.

OSプロセッサコア数計算時間 [sec]
CentOS 7Intel(R) Xeon(R) Gold 6140 CPU @ 2.30GHz363,304

クラウド環境の活用

メゾスケール解析モデルのスケーラビリティ等を確認するため,クラウド上での解析を実行しました.
クラウド環境ではapptainerコンテナの技術を使って,実行イメージを環境にアップロードするだけですぐに実行ができます.(クラウド環境でのビルド作業が不要)
利用したのはGCP(Google Cloud Platform)で,計算環境,計算時間,請求金額について下記に示します.

プロセッサコア数計算時間 [sec]請求金額* [$]請求金額** [¥]
AMD EPYC 7B13163,9910.53281
AMD EPYC 7B13282,0640.31548
AMD EPYC 7B13562,2180.770117
Intel(R) Xeon(R) CPU @ 2.60GHz482,4720.872133

*…1時間当たりの費用目安をもとに計算(スポット利用時)
**…2025/10/9時点の為替(152円/ドル)をもとに計算

今後の展望

今回はシェル要素が非線形静解析で使用できなかったため,ソリッド要素に変換して解析を実施しましたが,現在シェル要素の実装が進んでいます.(直近での発表
メゾスケール解析モデルでシェル要素が利用できるようになれば,埋め込み拘束の自由度が2分の1になります.(現在のソリッド要素はシェル要素をオフセット=節点数が2倍して作成している)
現在の解析に必要なメモリは140GB以上であるため,解析できるマシンがかなり限られてしまいます.(だからこそ,クラウド環境での実行を視野に入れました)

今後,シェル要素や拡張ラグランジュ法・ペナルティ法など,必要なメモリを抑える手法が選べるようになれば,より手軽に,あるいはより詳細な解析を実行できるかもしれません.

さいごに・謝辞

弊社では上記のような解析モデルの作成や実行環境の構築,解析結果の可視化などを実施しています.

特に,クラウド環境の活用はFrontISTRのような大規模並列に対応したOSSとかなり相性が良いです.ご興味のある方は弊社お問い合わせフォームからご連絡ください.

最後に,委託業務のご発注および,解析事例のご提供に快諾いただきました東京大学 吉川暢宏教授にこの場をお借りして厚く御礼申し上げます.

以上

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